今回のSocial Good Circleでも、福祉や心理、地域支援など、それぞれ異なる立場で実践する参加者が集まりました。
Social Good Circleでは、あらかじめ結論を設定して話し合うことを目的としていません。「最近こんなことでモヤモヤしている」「自分の実践はこれでよいのだろうか」といった、日々の実践のなかで生じた違和感や迷いを持ち寄り、参加者同士で対話します。今回の対話を振り返ると、いくつかの異なる話題がありながら、その底には共通する問いが流れていました。
それは、「ソーシャルワーカーにとっての『正しさ』とは何なのか」という問いです。
支援することと、支援者自身を守ること
最初に大きなテーマとなったのは、支援者とクライアントとの「境界」でした。
ある参加者から、クライアントとLINEなどでつながり、時間を問わず連絡を受け続けるなかで、「安否を確認したい」という思いと、自分自身の精神的な負担との間でモヤモヤしている、という話がありました。
連絡を求める背景には、本人なりの不安や孤独、生活上の困難があります。それが理解できるからこそ、簡単に「対応しません」とは言い切れません。一方で、支援者にも生活があります。家族と過ごす時間もあれば、仕事から離れて休む時間も必要です。
対話のなかでは、「ずっとずっと仕事みたいになったら苦しい」「自分自身に返れる時間が必要」という言葉も聞かれました。また、心理職の立場からは、支援者としての自分とプライベートな自分との「境界線がなかなか引きにくくなる」という指摘がありました。
ここで重要なのは、境界を設けることを単純に「支援を断ること」と捉えないことではないでしょうか。
支援者自身が疲弊し、支援を継続できなくなれば、結果として本人への支援も維持できません。実際の対話でも、「自分が潰れちゃうと、この人も路頭に迷う」と語られています。つまり、支援者自身を守ることと、本人を支えることは、必ずしも対立するものではありません。むしろ、支援が継続できる関係をつくるために、どのような距離を取るのかを本人と対話することも、支援の一部なのかもしれません。
「困らせる人」という見方をつくらない
この話から、さらに重要な論点が生まれました。
支援者が「電話が多くて困っている」「対応が大変だ」と他の支援者に伝えたとき、その言葉が共有されるなかで、本人がいつの間にか「支援者を困らせる人」として理解されてしまう可能性があります。今回の対話でも、「本人が困らせてる人っていうレッテルを貼ってしまう」のは避けたいという発言がありました。
これは非常に重要な指摘です。
支援者が自らの困難を誰かに話すことは必要です。しかし、「私はこの関わりに困っている」という支援者側の経験と、「この人は困った人である」という本人への評価は、本来まったく異なるものです。ところが、支援者間で情報共有を重ねるうちに、この二つが混ざってしまうことがあります。
そして一度「対応困難」「要求が多い」「関わりにくい」といった見方が形成されると、その視点から本人を見るようになります。その結果、「本人のストレングスも支援者が奪ってしまう」という言葉も対話のなかで語られました。だからこそ、私たちは本人だけをアセスメントするのではなく、「自分は今、この人をどのように見ているのか」を問い返す必要があります。
専門職の「正しさ」が本人から離れていくとき
もう一つ印象的だったのが、多職種による支援についての話でした。
ある参加者から、本人を支えるために多くの専門職が関わり、さまざまな社会資源につなごうとしているものの、本人自身はそれを望んでいないことがある、という経験が語られました。
ソーシャルワーカーには、社会資源を開発し、人と人、人と制度をつなぎ、ネットワークを形成する専門性があります。しかし、「つなぐこと」そのものが目的になったとき、本当にそれが本人のためになっているのか、という問いが生まれます。
対話では、「関係を広げればいいってもんでもなくて、タイミング」があるのではないか、という趣旨の発言がありました。これは、「専門職として正しいこと」と「本人にとって必要なこと」が必ずしも一致しない可能性を示しています。
制度につなぐ
学校に戻す
安全を確保する
サービスを導入する
ネットワークを広げる
いずれも、それ自体は間違ったことではありません。しかし、「正しい支援」であるからこそ、私たちは立ち止まって問う必要があります。
「これは誰にとっての正しさなのか」
「本人はそれを望んでいるのか」
「私たちは何を解決しようとしているのか」
自らの実践を「批判的に」捉えていくことも、必要なのではないでしょうか。
組織の「正しさ」と、本人の「今」
この問いは、子どもや不登校をめぐる実践の話にもつながりました。
対話のなかでは、教育行政や地域では「学校に行くこと」が「正」とされやすい一方、ソーシャルワーカーは「本人が今どうしたいかを見る」という話が出されました。さらに、「一番大事なのはやっぱり本人」「当事者なんですよ」という言葉が続きました。
組織には組織の目的があります。行政には行政の責任があり、学校には学校の役割があります。医療、福祉、司法にも、それぞれの制度上の「正しさ」があります。ソーシャルワーカーもまた、その組織のなかで働いている方が大半です。
だからこそ難しいのだと思います。組織の論理を無視することはできません。しかし、それだけに従えば、本人が見えなくなることがあります。「誰を主軸としてクライアントとするか」という参加者の言葉は、この葛藤を端的に表していました。
対話は「答え」を得るためだけにあるのではない
今回のSocial Good Circleを振り返って、もう一つ重要だと感じたのが、「モヤモヤが解決しなくてもよい」ということです。
ある参加者は、前回のSocial Good Circleで話した実践について、その後も「もやもやの中で手探りしている」と語りました。これは、この場の特徴をよく表しているように思います。
スーパービジョンや事例検討では、実践を整理し、課題を明確にし、次の支援方針を考えることが求められる場合があります。しかしSocial Good Circleでは、必ずしも「では明日からこうしましょう」という結論を出す必要はありません。むしろ、自分一人のなかにあったモヤモヤを言葉にし、それを他者が聞き、「自分にも似た経験がある」「別の立場から見るとこう見える」と言葉を返していく。
その往復のなかで、自分が当然だと思っていた前提が少しずつ揺らいでいきます。これは、単なる「悩みの共有」ではありません。自らの実践をいったん対象化し、他者の視点を介して見直す「省察」の過程であると考えられます。
ソーシャルワーカーとして「問う」こと
今回の対話から見えてきたのは、ソーシャルワーカーの専門性とは、「正しい答えを知っていること」だけではないということでした。
自分が正しいと思ったときほど、
「本当にそうだろうか」
「誰にとっての正しさだろうか」
「本人の声はどこにあるのだろうか」
「自分の立場や組織の価値観に引っ張られていないだろうか」
と、自らに問い返すこと。
そのためには、一人で考え続けるだけでは難しい場合があります。他者に語り、問い返され、異なる専門性や経験に触れることで、初めて自分の「当たり前」が見えることがあります。
今回の対話の終盤には、「当事者の声に耳を傾けることが、すごく簡単なようで難しい」という言葉もありました。Social Good Circleが目指しているのは、誰かが誰かを指導する場でも、正解を教える場でもありません。
日々の実践で生じた違和感を持ち寄り、それぞれの経験と言葉を重ねながら、自分自身の実践をもう一度問い直してみる。その小さな往復こそが、ソーシャルワーカーとして「問い続ける」ための支えになるのではないかと考えています。
次回のSocial Good Circle
次回は、9月25日(金)20:00から開催します。
今回のような専門職としての迷いだけでなく、「最近こんなことが気になっている」「誰かに話してみたい」「答えは分からないけれど、少し考えてみたい」ということでも構いません。話したいことがある方も、まずは他の人の話を聞いてみたい方も、それぞれの参加の仕方で構いません。
正解を持ち寄るのではなく、問いを持ち寄る。そして、対話を通して、自分自身の実践を少し違う場所から眺めてみる。
次回も、そのような時間を皆さんと共有できればと考えています。
Social Good Circle 開催詳細
Social Good Circleには多くの方が参加しやすいように、オンライン開催としています。仕事から帰ってきてひと段落した時間帯にすることで、ゆったりと語り合えるようにしています。以下、開催詳細をご覧ください。
開催日
- 2026年9月25日(金)20:00〜21:30
参加方法
- オンライン(zoom使用)
申し込み後にPeatixより、招待メッセージが送られてきます。
参加費
- 無料
申込方法
下記Peatixページから申し込むページへ移動します。
必要項目を入力していただき、送信後、開催に関するメールがPeatixより届きます。
(Peatixでの申し込みが難しい方は、当ホームページの「お問い合わせ」からご連絡ください)

申込手順
枚数を選択したら「次に進む」をクリック


その後、下記の画面が表示されると手続き完了

当日は「イベント視聴ページに移動」からzoomへ入室する

メールが届かない際は、迷惑メールフォルダに送信されている場合があります。それでも届いてない場合は、socialgoodcircle2022@gmail.comへご連絡ください。
今後、Social Good Circleのイベントの告知を受けたい方は、Peatix内のSocial Good Circleページをフォローいただけると、適宜イベント情報を把握することができます。
Social Good Circleとは
Social Good Circleは「支援者のモヤモヤをダイアローグする場」としています。よって、参加者同士の上下関係もなく、全てがフラットです。日々の実践や人間関係など、モヤモヤしていることを語っていただき、聞く側は助言も否定もせず、ただただ訊くことに徹します。
もちろん訊いた後に、自らのモヤモヤを語っていただくことも大歓迎です。「今更こんなことは職場で話せない」や「誰か私のモヤモヤを訊いてほしい」など、Social Good Circleにおいては気楽に語っていただける空間になっています。
参考記事
Social Good Circleが誕生した背景や、Social Good Circleの詳しい説明は下記の記事をご覧ください。

【ご提案】職場でSocial Good Circle開催のお手伝い
Social Good Circleは「否定せず、助言せず、解決もしない」語らいの場として開催しています。このコンセプトは一見すると、対人援助の場面では否定的な意見を浴びるかもしれません。
なぜなら「モヤモヤ=困っていること」と捉えることで、「職員が困っていることを、上司及び同僚同士で解決しなければならない」との思考に対して、真逆の発想でSocial Good Circleを開催しているからです。
僕は決して、「解決しなければならない」とする思考や行動を否定したいわけではありません。必要に応じて解決を優先する場合もあると理解しています。
しかし解決を優先するがあまり、モヤモヤを抱えている職員が本当に困っていることを語れるかは疑問が残るところです。このように考えるには過去の記憶が起因しています。
僕は約6年間、病院のソーシャルワーカーとして働いていました。普段の業務とは別に個々のスキル向上やいわゆる「困難事例」に対する次の一手を模索するため、定期的に事例検討会をソーシャルワーカー同士で開催していました。
いま振り返ると事例検討会は、ギリシャのコロッセオを彷彿とさせる思いで参加していたように思えます。
要するに「戦いに挑む」という表現がわかりやすいでしょうか。雰囲気も戦々恐々としており、ミスを説明しようもんなら鬼の首を取ったような勢いで「なぜそうしたのか?」と問い詰められる。
最初は初任者として「学ばせていただく」という気持ちで挑んでいましたが、やがて心身ともに疲弊していく自分を自覚しました。心の余裕がなくなるので、ちょっとした指摘も癇に障りますし、自らも「指摘返し」のような、一種の報復に似たような振る舞いをしていたときもありました。
このような状態になると事例検討会ではなく、ただの「足の引っ張りあい」です。その場では本音を誰も話さなくなっていました。恐怖と保身でしかないからです。
そんな過去を振り返って思うことがあります。
心理的安全性が担保された空間でなければ、人は自らのモヤモヤを決して語りはしない
自らが悩んでいること、困っていること、こんなことを話して大丈夫?と思っていることも、否定されないとわかっていると人は安全性を感じるとることができ、スーと話し始めます。
「どうしたの?」「それで?」と急く必要はありません。Social Good Circleは「否定せず、助言せず」をモットーに開催しています。最初から参加者へ伝えることで、参加者同士の「ここは安全だ」という雰囲気が醸成されます。
Social Good Circleでは、実に多様性豊かなモヤモヤを訊くことができます。そしてモヤモヤの深堀りは、ソーシャルワーカーのアイデンティティを取り戻すことにもつながります。
事例検討会のように追求型のスーパービジョンは、支援者が育たないどころかパワーレスに陥り、終いには退職することも考えられます。
そうではなく、じっくりとその人のモヤモヤした語りを訊き、参加者同士でフィードバックすることで、モヤモヤを語った人は「私の話を訊いてくれた」「受け入れてくれた」とカタルシスを得ることになります。
普段、支援者として支援対象者の話を聞くことには慣れていますが、自分の話を訊いてもらうことには慣れていない支援者が多いのが現状です。
Social Good Circleはこのような「支援者の語りを訊く」ことを実践することで、先にも述べたとおり、ソーシャルワーカーのアイデンティティを取り戻す(エンパワーメントの促進)へつながります。
とはいえ、Social Good Circleを職場でやろうとすると、導入・進行・まとめといった一連の流れを、誰がどのようにするのか悩むことが考えられます。悩むうちにズルズルと流れていくことはよくある話です。そこでご提案です。
職場でSocial Good Circleが定着するまで、もしくは体験として実施する、お手伝いをさせていただきます
Social Good Circleを実際に運営している者が、ファシリテーターや運営面をサポートすることで、簡単にSocial Good Circleを職場で開催することができます。
もちろん職場の目的や規模等に応じて、運営側が関わる濃淡を調整することも可能です。まずは下記の「お問い合わせフォーム」より、ご相談いただければと思います。
お問い合わせ確認後、運営側よりご連絡させていただきます。
この「Social Good Circle」が支援者のエンパワーメントにつながること、そして多くの支援者が自分語りをすることで、一人で抱え込まなずパワーレスに陥らない環境を構築できることを願っています。
長くなりましたが、ご興味がありましたらお気軽にお問い合わせくださいませ。


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